2021年3月特別メッセージ

 

2021年3月特別メッセージ

 

遠足プロジェクトは、2012年、東日本大震災の翌年からはじまりました。支援物資の中古ランドセルを譲り受け、それらをカナダと日本のアーティストが作品化し、日本国内20カ所、カナダ3都市を巡回しました。その後始まった遠足プロジェクトアジアでは、日本でのプレビュー展、シンガポール、フィリピン、インドネシア、香港、マレーシア、タイ、ミャンマー、台湾と巡回先のローカルなテーマと向き合うことで大きな反響を得て来ました。

アート作品となったランドセルは、触ったり、遊んだり、「ともに背負う」ことで鑑賞者と一体化します。その経験自体はとても楽しいものですが、会話を通じてプロジェクトの始まりである311へと思いはつながっていきました。自然災害の辛い経験が形を変えて、アーティストの多様な表現の作品になったことで、世界中の人たちが一緒に背負うことになったのです。

ずっと外わまりをして来た遠足プロジェクトと遠足プロジェクトアジアですが、震災から10年目の今年、日本へ帰ってきます。そして、プロジェクトの始まりの地である宮城県沿岸部と東京で展覧会を開催した後、しばらくはゆっくりと地域に根を下ろしてみたいと考えています。

世界各地では、現在コロナ禍や地球温暖化だけではない、大きな変化が訪れています。遠足プロジェクトアジアの巡回先でも近年大きな混乱がありました。香港、タイ、台湾、特にミャンマーの現在です。10年前に日本のことを思ってくれた世界中の仲間たちと同じように、今、彼ら・彼女らが置かれている状況に思いを馳せずにはいられません。今こそ、「レジリエンス」という言葉、「一緒に背負う」という行為について今一度考えを巡らせ、今現在、彼ら・彼女らと共にあるということを知って欲しい。

そして、10年前に起こったことを思い出して、そこからどのような道程を歩んで来たかを検証しなければなりません。

20213

遠足プロジェクト・遠足プロジェクトアジア代表、武谷大介